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人は見た目が9割(竹内一郎) [本ココ!]

 本書は近年、大ヒットした新書の一つ。正直に言ってしまえば、「タイトル勝ち」した典型例の本だという以外にさしたる感想もない。

人は見た目が9割 (新潮新書)

人は見た目が9割 (新潮新書)

  • 作者: 竹内 一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/10
  • メディア: 新書

 古本屋にて105円で買った興味本位の読み手である私の姿勢も「まとも」とは言えないかもしれないが、それを差し引いても本書の内容が充実しているものと評価することはできそうもない。
 著者は全編を通して、人間関係においてノンバーバルコミュニケーション(非言語コミュニケーション)がどれほど重要な位置を占めているかということを訴えている。本書で紹介されている心理学者の説によれば、人間関係における言語の役割は7%ほどだという。つまりは残り90%以上が「それ以外の要素=見た目や雰囲気etc」で占められており、それに意外と気付かないのが我々人間なのだという展開である。

・では、どうすべきかについては読み取れない

 ノンバーバルコミュニケーションが人間の認識の多くの部分を支えているという主張は間違っているわけではないだろう。それが大切だというのも否定しない。だが、本書のタイトルは明らかに読者の認識をミスリードさせる危険性を孕むものと思う。読者に「人間は結局見た目だよ」と思わせるのは著者が本来求めるところでもあるまい。自己を開発し、向上させて精神的欲求を満たしていこうとする人間を嘲笑うかのようなタイトル付けには感心しない。人間の価値を判断する際に「実は9割が見た目である」などという論旨をどうして許容できようか。本書の帯に「理屈はルックスに勝てない」とあるが、そもそも人間を判断する基準として理屈重視かルックス重視かという「立て分けそのものが欠陥極まりない」ということを指摘しておこう。巻末辺りまで来ると「服装で人格も変わる」ようなことを書いている。服装は縁(きっかけ)に過ぎない。変わる本体は心である。なれば心のあり方の方を探求すべきであろう。このような指摘をするのも「当たり前すぎて」何か場違いに感じてしまうほどに本書の論旨はいびつである。

 擁護する点も考えてみる。これはあくまで読み手の想像力の範囲でしかないが、この本は恐らく著者の手を離れて編集部でタイトル・帯・世論への訴求方法を作られてしまったのではないだろうか。「人は見た目も大切」くらいのタイトルだと内容ともそれほど齟齬はないのだが、「人は見た目が9割」というタイトルは「タイトル自体で読み手を安直に誘導した」と難じられて仕方があるまい。
 思うに、著者自身が少なからず本書の成立過程(編集部の編集姿勢)に対して驚きを持っているのではないだろうか。「著者の意図するところと大分違うタイトルが組まれてしまった」とでもいうような。そんな気がするのである。
 あえて読むところとするならば、第7節の人間同士の間合いの取り方に関する部分を挙げておこう。本書は7節を読めばそれで十分である。

 

本ココ!


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コメント 5

kyao

同じような著書に「人間は第1印象が…」というものもありますね。どうなんだろう…。
たしかに第1印象って(特にビジネスの世界では)重要なファクターではありますが、(私の場合は、ですが)最初の印象がいい人とはあまり長くお付き合いが続いたと言うことがありません。逆に最初「この人、何?」っていうほど印象の悪い人との方が長くお付き合いしていたり。(^^;
最初の印象が悪いと、あとから良いイメージが付いてくるのに対して、最初に良いイメージの人はガッカリが続くからという話もありますけど…。(^^;

閑話休題

まだ読んでいない私が物申すのは恐縮ですが、どこかタイトル負けしている本が多いというのも事実ですね。タイトルで読者を惹き付けようという出版社の意図もあるのでしょうけど、東スポのような手法でしか勝負できない書籍の有り様には問題があるように思えます。
by kyao (2008-04-15 08:10) 

ひろっぴ

新書ブームの中で勝つ為のタイトルだった、のかな?
いつだったかワタシもタイトルにつられて読んだことあります。
中身と外見は不可分だと思うので、見た目も大事にしないといけない、てのは分かります。中身を知られる前に見た目で避けられたらコミュニケーションとりようがないですからね。
明士さんの言う通りですよ。見た目をきっかけに中身をどう磨くか、ということが重要ですよね。
まあ新書なのでその入り口くらいまでしか書けないのかも。
あとは読み手がどう読むか。タイトル以上のことを読み取れるか・・・。
by ひろっぴ (2008-04-16 05:10) 

参明学士

★kyaoさん、第一印象って人間関係を論じる時によく使う言葉ですが、音楽なんかもそういうところがあるかもしれませんね。耳につきやすい「キャッチーな音楽」は第一印象は良いでしょうけれど、逆に飽き易かったりしますよね。最初は?の曲でも、じっくり聴くとものすごく良かったり…。
kyaoさんの仰る「長くお付き合いする人」ということと何か連関するところがあるかもしれません。

>東スポ

馬鹿らしい情報媒体の一つですよね。そういう意味では電車の中吊り広告なんかも「タイトル誇張」が多くって辟易します。

★ひろっぴさん、あからさまに新書ブームに乗っかったタイトルですよね。筆者の意思なんて本当にそこにあるんだろうか?と考えてしまいます。

>中身を知られる前に見た目で避けられたら

そうですよね。一般的に考えてみれば、そこまで見た目が酷すぎる人というのも極少数で、こうしたことってわざわざ本で書かなくったって誰でも知っていることだとも思いません?
私が「見た目論」をあまり認められないのは、それが人間の個性を(良くも悪くも)反映している部分が小さくないからです。背の高い低い、顔立ちの良し悪し、色、体型なども「見た目」に属するわけですが、それらの9割もが人間を判断する基準になるというのは、乱暴を通り越して偏見だと思うのです。そんなことを助長してどうするんだというわけです。
とはいえ、読み手も馬鹿じゃありませんから、この本のタイトルを真顔で受け止めるケースも実は多くはないのかもしれませんけれど。
by 参明学士 (2008-04-16 17:20) 

銀鏡反応

私も本屋で、平積みになっているこの書のタイトルを初めて見た時、このタイトル「人は見かけが9割」が“見かけ”だけでその人間の全てを判断することを恰も積極的に奨励しているように見うけました。

まぁ、確かに見かけがだらしなければ、相手に与える第一印象が悪くなり、その相手とのコミュニケーションも成り立たなくなるでしょう。

が、所詮、人間は内面がどうかで評価がさだまる。「心」できまる。古の哲人も「心こそ大切なれ」と言っているくらいです。

「心」を磨けば、つまり、おのれの内面で「人徳」というものを培えば、仮令顔立ちの良し悪し、姿形に関わらず、まわりの人々に本当の意味で良い印象を与え、その印象を動かし難いものにすることができるはずです。

この本のタイトルをみて思うに、仰るように読み手の意識をミスリードしかねないタイトルで、まさに「売れる」ことを意識して出版社側がつけたとしか思えない。私でしたら、こういうタイトルの本には眼をすら通さず、他の本を購入しますね。
by 銀鏡反応 (2008-04-16 22:27) 

参明学士

★銀鏡反応さん、新書は相当に商売向けの本であることがわかってはいても、こうまで露骨だとやはりイヤなものですね。
本書の中身はほぼ「エッセイ」みたいなもので、そんなに良し悪しを云々するようなものではないという気もしないでもありません。
実際のところは銀鏡反応さんも仰っていますが、出版社側の主導でついた売文屋的タイトルなんじゃないかなと私も考えているところです。著者にはきっとそんなに悪意はないんじゃないかとは思うのですが…。
by 参明学士 (2008-04-18 19:13) 

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